自分の闇と出会った日

日本が大好きで、
海外なんて絶対に嫌だ、と言っていた父が
ある日突然、同居に承諾してくれました。

足も弱くなってきて、
一人暮らしは心細いんじゃないかと思っていたので、
何度か誘っていたのです。

こうして新生活が始まりました。
・・新生活というより、実際に始まったのは、
まさかまさかの修行生活だったのですが。

父がやっぱり日本に帰りたいと言い出し、
実際に日本へ戻るまでの7ヶ月間、
わたしは、自覚さえしていなかった自分の闇を
嫌というほど見せつけられることになったのです。

わたしは、幼少期から父と母が大好きで、
父と母が悲しむくらいなら、自分が悲しい方がマシと思っていました。

だから、愛はあるけど理不尽な父の振る舞いや、
冗談半分で、悪気なくぶつけてくる言葉を、
傷ついていても笑って受け止めてきたのだと思います。

わたしが怒ったら、泣いたら、
父が気まずくなるから。
大好きな父に、そんな思いをさせたくなかったから。

今思えば、ちょっと歪んでいたなぁと思います。

でも当時のわたしは、それを優しさと信じていました。
「優しいわたし」でいられることに、
どこかで自惚れていたのかもしれません。

今となっては、ちょっと昭和の昼ドラ気取りで笑えます。

でも、気づかないうちに溜まっていたものは、
いつか必ず溢れ出すわけで・・。

同居をきっかけに、
今まで押し込めてきた感情は、
日に日に抑えがきかなくなっていきました。

ある日、あまりの怒りにブチ切れ、
父にぶつけてはいけない言葉を、
紙に向かって必死で書き殴りました。

あまりの筆圧に、紙が破れ、ボールペンが折れました。

ボールペンって折れるんだ・・
妙なことに感心しながら、
八つ当たりされた哀れなボールペンが気の毒になって、
謝りながら泣きました。

結構な混乱ぶりです。

でも、そのおかげで少し力が抜けて
なんだか可笑しくなってきてしまいました。

まるで『千と千尋の神隠し』のカオナシの場面みたい。
もしあれを人間がやるなら、
きっと、このわたしは適役だわ。

それくらい、自分の中からヘドロのような感情が止まらず、
見たくもないものが溢れ出していました。

醜くて、激しくて、哀れで、できることなら、
無かったことにして捨ててしまいたい感情。

でもそこで、やっと気づいたことがあります。

わたしは、この見たくもない自分の存在を、
ずっと何十年も無視してきたのだということに。

優しいわたし、我慢できるわたし、
ものわかりのいいわたし。

そんな「いい子」のわたしばかりを愛して、
怒るわたし、嫌うわたし、耐えられないわたしのことは、
ずっと置き去りにしてきたんだな。

少しでも出てこようものなら、
「あなたは認めない」と、冷たく突き放して。

父へのあの激しい怒りは、
見てもらえないもう片面のわたしが、
「わたしもここにいる!!」と訴えていたからなのかもしれません。

その声が、やっと聞こえた気がしました。

それに気づいた時、
その子があまりにも可哀想で、寂しそうで、愛おしくて、
抱きしめたいような気持ちになりました。

「あぁ、あなたも見てもらいたかったんだね、ごめんね。」
「ここにいていいんだよ」

あの朝は、たぶん人生で一番怒った朝でした。

その勢いで、見ないようにしてきた自分との境目が
壊れたのかもしれません。

たぶんあの朝、
わたしは初めてわたしのもう片割れに出会いました。

そしてたぶん、
この朝を境に、わたしの中で何かが動き始めました。


あまりのストレスがかかったせいか、
この後、内側に隠れていた白髪も顔を表し始めたけれど、
この子たちの存在にはまだ、
「ここにいていいんだよ」って言えない・・

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